前原誠司前外相が民主党代表選への出馬を表明し、主な立候補予定者のエネルギー政策が出そろってきた。菅直人首相が打ち出した唐突な「脱原発依存」のあおりで、供給力不足に悩む電力業界は、新代表による政策修正で停止中の原発の早期再稼働に望みを託す。北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が東京電力福島第1原発事故後初めて、定期検査終了後に営業運転入りしたこともあり、原発依存度の高い関電管内を中心に、新代表へ寄せる期待も膨らんでいる。
「20年後の原発廃止に賛成だが、急激な脱原発はポピュリズム(大衆迎合)」(前原前外相)、「原発ゼロではこれまで培った技術が途切れてしまう」(海江田万里経産相)など、多くの候補者の原発に対するスタンスは、脱原発では産業が立ち行かなくなる現実を見据えているようにみえる。
電力業界では浜岡原発の停止や、唐突なストレステスト(耐性検査)の実施、「脱原発依存」宣言など、菅政権の原子力政策に対する批判が多い。政策に一貫性が見られないこともいらだちの要因で、「菅首相が表舞台から去るならば、誰が首相になっても、これ以上悪くなることはないだろう」(関西の財界首脳)との言葉が漏れるほどだ。
しかし、菅首相が去っても、電力不足の問題は残る。今年の夏は節電で乗り切れる見通しだが、現在稼働中の原発も相次いで定期検査に入り、電力不足に拍車がかかるのは必至だ。
再生可能エネルギーの開発が進むまで、停止した原発の代替電源は火力発電中心にならざるを得ない。そのために発生するコスト増は平成24年だけで3兆円ともいわれており、「原発は、日本経済の成長促進から成長制約に転じた」(稲田義久・甲南大学経済学部教授)との声もある。
とりわけ、11基中7基の原発が停止している関西電力管内では、電力不足と超円高のダブルパンチに苦しむ中小企業経営者が多く、再稼働のニーズは大きい。
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