歴史的な円高が、東日本大震災で落ち込んでいた海外旅行者数の回復に追い風となっている。
現地で割安に買い物ができるという期待感が高まっているためだ。
成田空港や関西国際空港では13日、今夏の出国ピークを迎え、両空港からこの1日だけで6万人以上が海外に飛び立つ。
7月にハワイ便が増えたばかりの関空では、ハワイ人気も熱を帯びている。
■「お土産を奮発」
関空ではハワイ、サイパン、グアムなどに向かう便が午後9時台に集中する。
11日夜、国際線スポットには旅行者の笑顔であふれていた。
円高の進行に家族3人でグアムに行く富山市の主婦、朝日美奈さん(43)は「買い物をいっぱいして、お土産は奮発したい」。
1年ほど前は円相場は1ドル=85円前後で推移していたが、現在は76円台まで円高が進行。ハワイへ家族旅行をする大津市の会社員、増田仁司さん(51)は「7月半ばに両替していたが、それからさらに円高が進んだ。そのときは安いと思っていたのに」と悔しそう。
一方、精密部品製造の会社に勤める大阪府八尾市の男性(48)は「旅行のときはいいが、会社には輸出部門もあるので、単純に喜べない」と少々複雑な表情だった。
■アジアも人気
円高はドルだけでなく、韓国のウォン、タイのバーツなど多くの通貨に対しても進行。各旅行会社によると、円高を追い風に韓国や東南アジアなど近場のアジアでも海外旅行者数が増加している。
近畿日本ツーリスト(東京)やエイチ・アイ・エス(同)では、夏場の海外旅行予約は前年同期と比べ、約1割増。エイチ・アイ・エスでは「円高効果をさらに取り込みたい」と、円高還元として宿泊ホテルの割引も行うなどてこ入れを図る。
こうしたことを背景に、海外旅行者数は回復に向かっている。関空では大震災直後の4月、前年に比べて26%減の64万人に落ち込んでいたが、夏休み期間の海外旅行客の予想は、前年比で4%減にとどまっている。
■増便効果も
一方、関空で海外旅行者数の回復に一役買っているのはハワイ便。7月13日にハワイアン航空が週7便で新規就航し、日本航空、デルタ航空も加わり、ハワイ行きの便数を増やした。
JTBでは、関空発のツアー予約で8月だけでも前年比10%増となる好調ぶり。近畿日本ツーリストでは、10月も人気が続いており、担当者は「繁忙期の夏を過ぎると航空料金も下がり、10月の予約は取りづらい状況になっている」と話した。
新規就航したハワイアン航空は「羽田便も7月から30席増やしたところで、関空便も好調。円高で需要は伸びている」と話している。
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