林原の外部調査委員会がまとめた報告書では、不正経理を長年続け、取締役会を開かずに野放図な投資を繰り返すなど、グループの「絶対的存在」だった林原健前社長らの暴走ぶりが浮き彫りになった。
破綻が取引先や地元に与えた影響は大きく、前社長らの社会的、道義的責任を明確にするため刑事告訴に踏み切るかどうか、管財人の判断が焦点となっている。
報告書によると、林原が購入した総額約50億円もの美術品は、中国の天安門事件で美術品が流出したのを機に、前社長主導で「価値の高いものから購入した」とされ、趣味的な投資だったことがうかがえる。中核4社から流出した資金も、一部が前社長の自宅の購入費や家族の納税に充てられるなど公私混同ぶりが目立つ。
林原の経営体制については「前社長と林原靖前専務が絶対的な存在だったことは疑いがなく、他の取締役がいさめようとしても、受け入れられる状況ではなかった」と指摘している。
管財人の松嶋英機弁護士は今月4日の記者会見で「告訴すべきかは内容による」と話し、刑事責任追及についての方針を明確にしていない。今回の報告書は金融機関など一部に配っただけで公表しておらず、情報開示も積極的とは言い難い。
林原が取引先などの信頼を取り戻して再建を進めるには、創業家が支配していた時代の問題をすべて明らかにし、透明性の高い企業統治体制を確立することが求められている。
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